[第1話]資産が1/3に溶けたあの日。リーマンショックが、「金銀」という盾に向かわせた。

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第1話:【序章】かつてポンド/円の暴落で、俺の資産は溶けた。

「設備は直せるが、通貨の価値は直せない。だから、金銀を積み上げることにした。」

今、田中貴金属やSBI証券のマイページを開くと、そこには2021年からコツコツと積み上げてきた「金(ゴールド)」「銀(シルバー)」の輝きがある。しかし、俺が最初からこの「実物資産の盾」を持っていたわけではない。

すべては、2008年。あのリーマンショックから始まった。

1. 円キャリー全盛期、画面上の数字に酔いしれた日々

今から17年前。当時のFX市場は、今では信じられないような熱狂の中にあった。 ドル/円のスプレッドは5銭。トルコリラ(TRY/JPY)は1枚(1万通貨)持っているだけで、毎日400円のスワップ金利が転がり込んできた時代だ。リラが90円台という、今思えば異次元の円高リラ安だった。

俺はUSD/JPY、GBP/JPY、そしてTRY/JPYをぶん回し、レバレッジをかけて資産を2倍まで膨らませた。 「このまま行けば、億かな?法人化しないと。」 画面上で増え続ける数字に、本気で思っていたし、完全に酔いしれていた。

2. ベアスターンズ破綻と、ワールドビジネスサテライトの向こう側

異変は少しずつ、でも確実に忍び寄っていた。 ベアスターンズが破綻し、ニュースではサブプライムローンの崩壊が報じられていた。 夜、WBS(ワールドビジネスサテライト)をつけると、クレジットカードを何枚も作って破綻したアメリカ人の姿や、「家を返せばローンはチャラ」という米国の仕組みが紹介されていた。

俺はどこか他人事のように、それを眺めていた。 「俺のポジションは大丈夫だ。少し待てばまた戻る。さがっても、ドル円5円~10円程度 ポンド円も~20円程度だろ、各中央銀行政策金利差を考えても問題なし」 根拠のない自信が、判断を狂わせた。

3. ナイアガラ・ジェットコースター、そして200万円の損切り

そして、リーマンショックという名の「ナイアガラ」がやってきた。

レバレッジをかけたポジションは、一瞬で牙を剥いた。GBP/JPYのジェットコースターのような暴落。 一晩で200万円という、現場で必死に働いて稼いだ金が、損切りとともに消えていった。

掲示板を見れば強制ロスカットの嵐。更新が止まる投資ブログの数々。 市場からの完全退場を避けるため、震える手で大規模な損切りを決断した。 気づけば、あんなに誇らしげだった資産は1/3まで溶けていた。

4. 暗中模索の中で見つけた「盾」

なんとか市場に踏みとどまることはできたものの、そこからは暗中模索の日々。 「紙の資産」や「画面上のレバレッジ取引」がいかに脆く、一瞬でゼロになり得るのか。俺はその恐怖を骨の髄まで味わった。

このような体験があったからこそ、俺は2021年、ある決断を下すことになる。 それが「金銀(実物資産)」への投資だ。

[第2話]2021年、田中貴金属の門を叩いた日へ続く

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